朔夜の隠者の日記

ある鬼の話④

05-19 08:40

経の意味を知って後は、さらにその奥のことを問うてきた。俺もわかる範囲で応え、わからないことについては、共に考えた。二人で考えると、自分では全く気付かない疑問に出会ったりもする。そのような時は、どちらが師だかわからんなと言い、やはり二人で笑った。
成り行きのように始まった付き合いであったが、毎日師匠、師匠と懐かれれば、たとえ相手が鬼であろうと、くすぐったくもあり、うれしいものだ。昼夜を問わず没頭し、質問をする鬼に、少しの意地悪を言ったこともある。そんな時はいつも決まって、悲しそうな、困ったような顔をして、申し訳ないと言うのだった。時には意見の違いから口論もした。共に山に入って薪を集めた時は、さすがにその力に感心した。いつしか彼は、俺の最も大切な友となっていた。
ある時、鬼は俺に訊ねてきた。
「師匠はなぜ、このように人との交わりを避け、人里を離れて暮らしをしているのですか?」と。
思えば、その理由も遠く色褪せていることに気が付いた。当初は、人の世の些細なことに一喜一憂する姿に辟易したことなど、様々な理由があったが、何度も春を迎えているうちに、今ではただ、心地よいから、となっていた。幸い、養うべき家族もないので、この自由気ままな暮らしはこの上なく性に合っていた。
正直にそう応えると、鬼はこちらを真っ直ぐにみながら、こう言ってきた。
「寂しいと思ったことはございませんか?」
「そうだな。うんと若い頃ならば、時々は寂しく感じたかも知れんが、ここの暮らしもなかなかに賑やかでな。鳥も来れば獣も通る。季節に合わせて様々な花が咲く。それだけでも俺には十分楽しいものさ。それに、時には仏門を志したいという、妙な鬼が訪ねてくれるしな。」
そう言って見ると、鬼は照れたように笑っていた。
そうこうしているうちに、約束の一月が経とうとしていた。

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